大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所横須賀支部 昭和31年(ワ)127号 判決

原告 国

訴訟代理人 越智伝

被告 北川菊松

主文

被告は原告に対し金二十二万六千四百九十一円七十七銭及びこれに対する昭和二十七年一月一日から右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告代理人は被告は原告に対し金二十二万八千七百三十二円及びこれに対する昭和二十七年一月一日から右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

一、(一) 訴外財団法人海仁会は昭和二十二年三月二十三日、昭和二十一年勅令第百一号(昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾二伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク政党、協会其ノ他ノ団体ノ結成ノ禁止等ニ関スル件)第四条第一号(ロ)、第二条の規定による解散団体に指定せられ、(昭和二十二年三月二十五日内務省告示第七二号)同令第三条により海仁会の所有又は支配する財産はその取引が禁止せられ、原告において接収保管するところとなつた。

(二) その後、一九四八年三月一日付SCAPIN一八六八号「解散団体所属財産の処分に関する件」覚書が発せられ、これに基き昭和二十三年八月十九日、「解散団体の財産の管理及び処分に関する政令」(昭和二十三年政令第二三八号)が公布せられ、同政令第二条により、右海仁会が昭和二十年八月十五日以後になした財産の処分のうち、

一、公租公課の支払

二、使用人の給料、家賃、地代、電気料金、ガス料金、その他日常必要な経費の支払

三、贈与、貸付、清算費用の支払、他の団体に対する出資又はその他の金銭の交付でその額が一万円に満たないもの

四、不当に低廉でない対価で得てした財産の処分

を除くその余の処分はすべて無効とされ、且つ同令第三条により海仁会の動産、不動産、債権、その他の財産権はすべて昭和二十三年三月一日、国庫に帰属することになつた、(前記覚書G項参照)

(三) そこで原告においては、右覚書並びに右政令に基き、訴外海仁会の実施した無効となるべき財産処分の調査をしたところ、(甲第八、一〇号証参照)昭和二十年十二月三十一日附にて、訴外海仁会横須賀支部久里浜支所が被告(久里浜荘、北川菊松)に対し、サージ足袋外百七十四種に上る酒保品を代金十七万三千百七十八円六十銭(その明細は別紙物件目録記載のものに後記(四)記載の物件を加えたもの)にて売却していることが判明し、右売却時における適正価格を査定した結果、金七十六万六千五百十一円七十二銭相当と認められたので、右酒保品の売却は不当に低廉な対価をもつてした財産の処分に該当し無効のものと認め、現品を被告から回収することし、昭和二十五年九月二十二日附にて原告から神奈川県知事に対し、本件物件の処分は右政令第二条第一項本文の規定に該当する無効の処分と認定するから、現品の存在するものは回収し、他に処分済のものについては、その相当対価を回収するよう指令した。

(四) そこで神奈川県知事は右指令に基き、昭和二十六年二月二十一日被告から現品を回収しようとしたところ、新丸型南京錠半打(六個)、白靴墨二〇個、皮砥二個、靴当一〇〇個、砥石三〇〇個、竹パイプ六〇〇本、ペン軸二〇本、墨汁四個、強化三〇個、リボン蝿取二、〇〇〇個が回収できたのみで、爾余の物品は、被告においてすでに処分ずみであつた。

(五) よつて現品の回収できなかつたものについては、被告は海仁会より受領して間もない頃(昭和三十三年八月十九日以前)、少くとも適正価額以上の対価を得て処分したのであつて、右は法律上の原因なくして相当の対価を得たことになるから、原告は右回収できなかつた別紙物件目録記載の物件(以下本件物件と称する)に対する相当対価を徴収することとし、右物件が国庫に帰属した昭和二十三年三月一日当時の適正価格を合計金六十一万九千七百十円三十七銭と査定し、これより被告が代金として支払つた十七万三千百七十八円六十銭を控除してその残額金四十四万六干五百三十一円七十七銭を被告から徴収すべく、その旨昭和二十六年五月十六日頃被告に通知した。

(六) ところが被告においては、右徴収金の支払を拒否し、昭和二十六年八月十二日附にて法務総裁大橋武夫に対し「解散団体海仁会横須賀支部財産(商品)売却による私に対する追徴金に関し意見書提出」と題する書面を提出し、再調査方を願つて来たので、原告においては徴収金額を再調査して適正価格を金四十二万千八百八十九円十五銭と決定し、これより金十七万三千百七十八円六十銭を差引いた残額金二十四万八千七百十円五十五銭につき、被告に対し昭和二十六年十二月二十二日附納入告知書を発して、同月三十一日までに納入するよう告知したが、被告はこれが支払に応じない。

(七) そこで原告は本訴を提起したが、その後調査の結果、本件物件の価格は別紙物件目録記載のとおりでその合計額は金四十万干九百十円六十三銭が相当と認められるので、右金額から被告の支払つた金十七万三千百七十八円六十銭を差引き金二十二万八千七百三十二円を請求することとし、右金員及びこれに対する昭和二十七年一月一日(納入告知書による納付期限の翌日)から支払ずみに至るまで、年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二、被告主張事実を否認する。

(一) 被告は本件売買は仮装売買であると主張するけれども、海仁会横須賀支部久里浜支所昭和二十年十二月分収入支出決算書及び同書添付の物品買受証、収納証によれば、昭和二十年十二月三十日付で本件サージ足袋外一七四種の物件が代金十七万三千百七十八円六十銭で、右久里浜支所から被告に売却され、その代金が収納されていることは明白であり、また被告は昭和二十七年二月五日付政令第二三八号第四条による法務総裁宛報告書及び同年二月二十一日付の払下商品処理報告書、同年八月十五日付経過報告書等において右売買事実を認めている。またその当時海仁会として本件物件を帰還者、引揚者等に処分するとしても、わざわざ被告に売却した形をとり、被告個人事業を装つた上、処分しなければならない必要があつたことは認め得ないところである。現に海仁会横須賀支部は横須賀市内の事務所を接収され、久里浜地区に移転し、同所において昭和二十一年一月以後においても、自ら事業を継続し、酒保品の販売等を実施していたのであるから、海仁会として直接自分の事業として行うことはできたのである。

なお海仁会横須賀支部久里浜支所昭和二十年十二月分収入支出決算書添付の物品買受証等に記載されている売却先の久里浜荘の営業は昭和二十一年三月九日設立された合名会社久里浜会館(代表者北川菊松)に譲渡され、更に株式会社久里浜会館に継承されている経緯に徴しても、海仁会から独立した被告の営業であつたことは明白であるから、仮装の売却先を記載したものというべきではない。

(二) 被告主張の物品供出の事実、また処分した物件は八分の利益で一般に売却したから不当利得はないし、物件は全部昭和二十一年三月頃までに処分したとの点は否認する。

(三) 被告主張の時効の抗弁は理由がない。原告は昭和二十六年十二月二十二日被告に対して納入告知書を送付したのであつて、被告は一旦これを受領した上、返送してきたから、右納入告知書により時効中断の効力を生じ(会計法第三十二条)、以後本件の支払命令申立まで、本件債権の時効期間(民法により十年間)は経過していないのである。

三、立証〈省略〉

被告代理入は、原告の請求を棄却するとの判決を求め、次のとおり述べた。

一、原告の請求原因事実、一の(一)(二)(三)中勅令、覚書及び政令に関する事実は認めるが、その他は不知である、(四)中爾余の物品は被告において処分済であるとの点は否認し、その余は認める、(五)は争う、(六)中納入告知書の件は不知である、(七)については、原告は本件請求を不当利得返還請求としているが、右主張は否認する。

二、原告主張の物件に対する売買の点は否認する。右物件の約三分の二は昭和二十一年一月中訴外財団法人海仁会横須賀支部久里浜支所において、復員者、外地引揚者及び滞留者の援護事業として売却処分したものであり、残余の約三分の一は或は同年二月中に海仁会の継続事業に使用処分し、或は各統制組合、食糧営団等に供出して、その残部は其侭保管中原告に引渡したもので、一物と雖も被告個人が引渡を受け処分したものはない。

三、原告と訴外財団法人海仁会との間に、右物件について売買の形式が存在するとしても、右売買は当事者双方相通じてなした仮装売買である。海仁会は昭和二十一年一月中旬連合軍総司令部から解散、事業停止命令があつたので、当時同会久里浜支所の事務長であつた被告は横須賀支部とも協議したが、事業を中止すれば、復員者、引揚者等に関する処理に重大な支障を来すのみならず、連合軍現地憲兵隊は事業中止を肯んぜず、継続方勧告があり、結局物件は被告が買受け個人として事業を継続する形をとるより他に方法がないということになり、昭和二十一年一月末、連合軍に対する方策として昭和二十年十二月末現在の在庫品(帳簿上)を被告において買受けた形を整えたのである。而して右は財団法人海仁会の従来の事業を継続し、そのためにのみ利用するという条件付仮装売買であつたから、物件はすべて前項記載のとおりに処分されたのである。従つて右は財団法人海仁会の経営名義を隠蔽したまでであり、依然として実質は海仁会の在庫品使用処分、事業運営に変りはなく、被告個人の自主的事業ではなかつたから、被告個人においてその責任を問われることはないのである。

因に財団法人海仁会は昭和二十二年三月二十五日内務省告示第七二号で解散するまで行為能力を有しており、その事業を継続したのであつて、木件仮装売買は連合軍指令本部への言訳のためであつて、海仁会の行為能力を否定し得るものでばない。

四、更に百歩を譲つて、右仮装売買が真実の売買と認定されると仮定しても、被告は従来の財団法人海仁会横須賀支部久里浜支所の事業を継続し、そのためにのみ利用することを条件として買受け、右海仁会従来の規定どおり記帳価格(即ち買受価格)の八%の利を加算して利用処分した上、その維持費(前掲国家的公共事業の必要費である建物費、入件費、電気水道其他の諸費用)を昭和二十一年三月の事業終了まで支弁したから、損失こそあれ、何等の利得もしていない。

即ち原告主張の物品全部が存在したと仮定しても(一部不存在、一部廃棄、一部使用不能であつた)、其価格合計金十七万三千百七十八円六十銭であるから、これより原告の回収品価格金千六百二十四円を差引き金十七万千五百五十四円の物件売買となる(食糧営団及び各統制組合への供出価格を含む)が、これらの物件は全部昭和二十一年二月末日までに処理済であり、供出以外はすべて右規定による八%の利潤加算で処分されたから、仮に全部につき利潤を得たとしても、利潤合計金一万三千七百二十四円となるところ、昭和二十一年一月中は実際は海仁会が運営しながら、表面は被告名義に仮装したので、その維持費は被告において負担支払を余儀なくされ、その額は金二万数千円に及び、前掲利潤はこれに支払い尽している訳である。然るに物件中、洋傘、風呂敷等繊維品、石鹸等洗剤については連合軍現地憲兵隊の指図の下にその被指名者に無償提供したものも多く、繊維品代金三万三百余円、洗剤代金二千六百余円の無償提供を考慮すれば、物件残存価格は金十四万円に足らないのであり、その利潤は金一万千円位であるから、前掲の維持費は欠損となつているのである。従つて被告は余剰人員を整理すると共に、特に海仁会の残存幹部の許可を得て、従来一杯二十銭で販売した汁粉を一杯四十銭に値上して販売して辛うじて昭和二十一年二月分の維持費を支弁した程で、被告は何等の利得を得ていないのである。

五、仮に原告主張の請求権があるとしても、本件債権は会計法第十条にもとづく消滅時効の五年により、昭和二十一年一月一日から五年間その権利を行わなかつたからすでに消滅している。原告は民法上の不当利得返還請求権に関する消滅時効の十年を主張しているがこれによるものではないが、若しこれによるものとするならば、本件は本訴申立までに十年を経過し、会計法第三十三条の適用がないから、すでに消滅している。

六、また本件物件の適正価格は別紙「被告の本件物件に対する評価額の主張」記載のとおり合計金十一万八千一円七十銭である。従つて被告はすでに金十七方三千百七十八円六十銭を支払つているから、原告に対しては金五万五千百七十六円九十銭の過払をしているので、あつて、原告に対して支払義務を有しない。

七、以上の理由で原告の請求には応じられない。

八、立証〈省略〉

理由

一、被告は、訴外財団法人海仁会(以下単に海仁会と称する)が被告に対し、原告主張の物件を売却した事実を否認し、右売買の形式が存在することは認めるが、右は海仁会が昭和二十年十二月末日をもつて解散団体に指定された旨の通達が昭和二十一年一月中旬になされたので、同月下旬に至り、被告が右物件を昭和二十年十二月末日に遡つて買受けた旨の形式をとつたまででその時には右物件の三分の二はすでに処分済であり、その余の物件も間もなく、海仁会として処分され、被告はその引渡を受けていないと主張し、被告本人は右主張にそう供述をしているが、他に右事実を認めるに足る証拠はなく、昭和二十一年一月下旬において、昭和二十年十二月末日に遡つて売買の形式をとることが可能であつたのならば、昭和二十一年一月下旬までに処分した物件についても、昭和二十年十二月末日までに処分した形式をとることも可能であつた筈で、何故すでに処分した物件を被告に売却の形をとつたかの理由が判らぬから、右被告の供述は措信し難く、成立に争いない甲第二、第三、第五号証乙第一号証の四、被告本人の供述によれば、昭和二十一年一月下旬被告が原告主張の物件を現金十七万三千百七十八円六十一銭にて海仁会から買受けたことが明らかに認められるので、被告の右主張は採用でぎない。

二、被告は右物件の売買が認められるとしても、右は海仁会との間でなした仮装売買である。すなわちその当時海仁会は解散団体に指定されたが、進駐軍部隊からは事業を継続するように云われたので、被告が右物件を買受けた形をとつたに過ぎないと主張するが、被告本人の供述によるも、海仁会に対しては解散命令が来たが、進駐軍は仕事をやめてはいけないというので協議の結果、被告個人が責任をもつて海仁会の従来の仕事を継続することになつたということが認められるのみで、その趣旨が、海仁会はその存続を失い被告個人が海仁会の従来の事業を行うというのか、海仁会はなお存続し被告が個人としてその責任を以てその事業を行うというのか、判然しないし、右物件について被告と海仁会との間で仮装売買に関する契約をした事実も認められない。また証人鈴木ノブ子の証言によれば、海仁会久里浜支所においても昭和二十二年頃まで酒保品等の販売をしていたことが認められ、証人掘込伸治の証言及び右証言によつて成立の認められる甲第九十一号証の一乃至八十五によれば、海仁会横須賀支部は解散命令後は海仁会久里浜支所に移り、同所において清算事務を行つていたが、その間酒保品、配給品等を販売していた事実が認められるから、被告主張の原告主張の物件についてのみ、海仁会久里浜支所として処分ができないため仮装売買をしたということは考えられない。従つて右主張も採用できない。

三、被告は仮りに原告主張の物件を取得したとしても、被告は何等の利得をしていないと主張するけれども、被告の海仁会久里浜支所における経営の実態が判然しないことは前認定のとおりであり、右物件の処分関係の具体的事実についても、これを認めるに足る証拠がないから右主張も採用できない。

四、被告は本件債務は会計法第三十条により五年間行わなかつたから時効消滅したと主張するところ、成立に争いない甲第十四号証の二によれば、被告は昭和二十六年五月二十日付にて神奈川県知事に宛て「昭和二十六年五月十六日二五地第八二二号を以て御通知を受けた海仁会横須賀支部より譲受けた物品に対する追徴金については支払の義務はない」旨並びに「書類を返還する」旨の書面を提出していることが認められるから、右日時において原告が本件債務の支払を催告したことは明らかであつて、右により時効は中断されているものというべく、本訴請求は民法上の不当利得返還請求であるから、民法第百六十七条によりその時効期間は十年とすべく、本件につき支払命令が被告に送達されたのが昭和三十一年十一月二十日であること本件記録上明らかであるから、被告の右抗弁は理由がない。

五、そこで原告の本訴請求について判断するのに、原告請求原因事実の一(一)(二)の事実は当事者間に争いがなく、成立に争がない甲第二十、第二十一号証、証人菅原敏彦の証言及び右証言によつて成立の認められる甲第八、第九号証、第十号証の一、二、証人村上惺の証言及び右証言によつて成立の認められる甲第六、第七号証、第九号証の一、二、第十二、第十三、第十五、第十六号証によれば、海仁会が昭和二十年十二月三十一日付にて被告に対し、原告主張の物件を代金十七万三千百七十八円六十一銭で売却した処分は、昭和二十一年勅令第百一号にもとづく昭和二十三年政令第二三八号により不当に低廉な対価をもつてした財産処分として無効と認定され、被告に対し現品の存在するものは回収し、処分済のものについては、その相当対価を回収するよう指令されたこと、而して被告は残存する物件は返還したが、その余の物件(原告主張の別紙物件目録記載の物件)(以下本件物件と称する)はすでに処分していたので、その適正価格について評価調査が行われたことが認められ、本件物件に対して追徴金納付の告知がなされたことは前認定のとおりである。従つて被告は本件物件を処分したことにより、その適正価格相当額を不当に利得したことになるが、被告は金十七万三千百十八円六十一銭を支払つているから、適正価格相当額からこれを差引いた残額を原告に支払うべきであると認められる。

六、本件物件の適正価格に対する原告の請求について判断する。

原告主張の別紙物件目録中

「雑品の部」一乃至六、十三、三十五、四十八、五十六、五十八、六十、六十一、六十四乃至六十六、七十五乃至七十七、八十二、八十五、八十六、八十八、八十九

「食糧品の部」二十一、二十二、二十五乃至二十八、三十

「文房具類の部」一、二、一〇、一五

「その他の部」六、十乃至十二、十五、十七の価格については当事者間に争いがない。

右以外の物品については、成立に争いない甲第二十四乃至第八十六号証、証人菅原敏彦の証言及び右証言によつて成立の認められる甲第八、第九号証、第十号証の一、二、証人村上惺(二回)の証言及び右証言によつて成立の認められる甲第六、第七号証、第九号証の一、二第十二、第十三、第十五、第十六号証、証人鈴木ノブ子の証言を綜合すれば、右物件の適正価格は、左記の物件については左記の価格を相当とすべく、その他の物件については原告主張の価格が適正価格であると認められるので、原告主張の別紙物件目録記載の価格を認めることとする。

「雑品の部」

二十二、湯呑茶碗、一〇〇個

右は原告主張の一個一円二十七銭はこれを認めるに足る証拠がなく、甲第八〇号証により一個四十二銭を認め、合計額は金四十二円となる。(請求金額との差、金八十二円)

二十六、スフ洋手、二四〇〇枚

原告主張の告示は純綿タオルの価格で、スフ洋手の適正価格とは認められないから、甲第八〇号証により一枚金二十五銭を認め、合計額は金六百円となる。(請求金額との差、金二百八十八円)

二十七、スフ洋手、一七五九枚

右は二十六と同様で、甲第八〇号証により一枚金二十二銭を認め、合計額は金三百八十六円九十八銭となる。(請求金額との差、金二百六十三円八十五銭)

三十四、塵紙、八六三締

右は原告立証の告示により、一締金五百六十円を認め、台計

金四干八百三十二円八十銭とする。(請求金額との差、金百七十二円六十銭)

四十二、縮シヤツ、一五七枚

右は、原告請求額が絹シヤツの価格であるから、縮シヤツについては、原告立証の告示中一枚金十五円九十五銭を認め、合計額金二千五百四円十五銭となる。(請求金額との差、金千三百三円十銭)

「食糧品の部」

十一、乾海苔、三千七百五十枚

右は原告立証の告示により一枚金四銭五厘を認め、合計額金百六十八円七十五銭となる。(請求金額との差、金百三十一円二十五銭)

以上の物件に対する原告請求額との差額合計は金二千二百四十円八十銭となる。

七、そうすると、本件物件の価格合計は原告主張の金四十万千九百十円六十三銭から右金二千二百四十円八十銭を差引いた金三十九万九千六百六十九円八十三銭となり、原告が被告に請求し得る金額は右金額から被告がすでに支払つた金十七万三千百七十八円六十一銭を差引いた金二十二万六千四百九十一円七十七銭である、

而して原告が被告に対して本件請求をなしたのが昭和二十六年五月頃であることは前認定のとおりである。

従つて原告の本訴請求金二十二万八千七百三十二円はそのうち、金二十二万六千四百九十一円七十七銭が相当と認められるので、原告の被告に対する請求中右金二十二万六千四百九十一円七十七銭及びこれに対する昭和二十七年一月一日から右支払済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を認容し、その余の請求を棄却し、訴訟費用は民事訴訟法第八十九条により被告の負担とし、仮執行の宣言は付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 石渡満子)

物件目録〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例